1,226種のSaaSをどうやって調べた? API提供・公開状況レポートの舞台裏

みなさんこんにちは!アンチパターンでSaaSus Platformのマーケティングも担当している野川です!

先日、私たちは「Horizontal SaaS 1,226種のAPI提供・公開状況」に関する調査レポートを公開しました。本レポートは、日本のSaaS業界におけるAPI提供・公開状況を分析したものです。今回のブログでは、そのレポートでは語りきれなかった「舞台裏」についてお伝えします。

※調査レポートはこちら:https://saasus.io/blog/horizontal-saas-api-report

実はこの調査、SaaSus Platformの新規機能「Smart API Gateway 機能」のリリースに合わせた記者発表会のために、限られた時間で進める必要がありました。私と、調査のイニシアチブを取ったもう一人のメンバーは、タイトなスケジュールの中、ロゴを一つひとつ画像検索し、マニュアルを作成し、時には深夜まで目を凝らして調査とレビューを繰り返しました。これは、まさに汗と涙の結晶です。

この記事を通じて、レポートの数字が持つ意味をより深く感じていただければ幸いです。


1. 調査の全貌:地道な作業の始まり

調査の対象は、SaaS比較サイト「BOXIL」を運営するスマートキャンプ株式会社が公開した「SaaS業界レポート2024」のSaaSカオスマップに掲載されている1,226のHorizontal SaaSです。調査は、私とメンバー、そして調査に協力してくれたチームメンバーで分担して進めました。誰がやっても同じ結果になるように、まず最初に取り掛かったのが「詳細な調査マニュアル」の作成でした。

ロゴを画像検索して製品URLを特定する。運営会社を調べて本社所在地から国内外を判断する。そして、「製品名 + API」といった検索キーワードを駆使し、APIの有無を確認する...。これらの手順を一つひとつ言語化し、調査メンバーが迷わないように細かく定義しました。

しかし、現実はマニュアル通りにはいきません。

例えば、似たようなロゴのサービスが検索に多数ヒットしたり、APIに関する情報がウェブサイトの非常に深い階層に埋もれていたり、そもそもサービスサイトが見つからなかったり。そんな想定外のケースに遭遇するたびに、マニュアルを更新し、判断基準を擦り合わせていきました。メンバーが調査した結果を私たちがレビューする作業も、慎重さが求められるものでした。


2. 調査で見えてきた「日本のSaaSのリアル」

こうして、膨大な時間をかけて集めたデータを分析する中で、レポートには書ききれなかった「日本のSaaSのリアル」が見えてきました。

今回の調査で特に印象的だったのは、APIの「発見性の低さ」でした。海外製品の多くは、APIドキュメントへのリンクをウェブサイトのヘッダーやフッター、または専用のデベロッパーページに明確に表示しています。しかし、国内製品では、APIを提供していても、ウェブサイトの深い階層に埋もれているケースが多々ありました。

これは、APIを積極的にアピールして外部サービスとの連携を促すというよりも、あくまで「付随的な機能」として捉えているようにも感じ、日本のSaaS企業特有の姿勢が垣間見えたように感じました。

なぜこのような姿勢が生まれるのでしょうか。その背景には、長らく個別カスタマイズを中心としたSIer(システムインテグレーター)が主導してきた日本のIT市場の特性が考えられます。SIerが顧客の要望に合わせてシステムを個別に構築・運用してきたため、サービスをAPIでオープンに連携させて利用するという「エコシステム型」の発想が、海外に比べて定着しにくかった側面があるのではないでしょうか。


3. まとめ:調査を通じて伝えたいこと

今回の調査は、日本のSaaS業界にAPIエコノミーの重要性を認識してもらうための一歩です。

今や、APIは単なる機能ではないと感じています。AIエージェントが台頭するこれからの時代、APIは企業の競争力を左右する重要な要素になると感じています。今回の調査で見えた「APIの価値に対する認識を深めること」が、日本のSaaSがグローバル市場で戦うためのカギとなるのではないでしょうか。

このブログが、皆さまの中で、API公開の価値について考えるきっかけを醸成できれば幸いです。